年金制度改正法案

厚生労働省は、衆議院での修正を踏まえ、年金制度改正法案に関する資料を更新しました。

改正の概要では、次の内容が追加されています。

・将来の基礎年金の給付水準の底上げ
① 政府は、今後の社会経済情勢の変化を見極め、次期財政検証において基礎年金と厚生年金の調整期間の見通しに著しい差異があり、公的年金制度の所得再分配機能の低下により基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合には、基礎年金又は厚生年金の受給権者の将来における基礎年金の給付水準の向上を図るため、基礎年金と厚生年金のマクロ経済スライドによる調整を同時に終了させるために必要な法制上の措置を講ずるものとする。この場合において、給付と負担の均衡がとれた持続可能な公的年金制度の確立について検討を行うものとする。
② ①の措置を講ずる場合において、基礎年金の額及び厚生年金の額の合計額が、当該措置を講じなかった場合に支給されることとなる基礎年金の額及び厚生年金の額の合計額を下回るときは、その影響を緩和するために必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。

また、下記の項目について改正内容が掲載されています。

●被用者保険の適用拡大
→ 短時間労働者(パート労働者など)の厚生年金等の適用要件のうち賃金要件を撤廃(公布から3年以内施行)
→ 企業規模の要件を段階的に廃止(2027年10月1日から2035年10月1日までの間)
・2027年10月:35人超
・2029年10月:20人超
・2032年10月:10人超
・2035年10月:10人以下
→ 常時5人以上の者を使用する個人事業所の適用業種を拡大(2029年10月施行。ただし、経過措置として、施行時に存在する事業所は当面期限を定めず適用除外)
→ 被保険者への支援として、3年間、保険料負担を国の定める割合に軽減できる特例的・時限的な経過措置を設ける(事業主が労使折半を超えて一旦負担した保険料相当額を制度的に支援)
→ 事業主への支援として、キャリアアップ助成金により1人当たり最大75万円助成(2025年度中に実施)

●在職老齢年金制度の見直し
→ 支給停止基準を現行の50万円から62万円に引上げ(2026年4月施行)

●遺族年金の見直し(2028年4月施行)
→ 遺族厚生年金(注1)
・男女ともに受給しやすくし、原則5年の有期給付に
・低所得など配慮が必要な方は最長65歳まで所得に応じた給付の継続
・有期給付の場合の加算や配偶者の加入記録による自身の年金の増額
・女性のみの加算を廃止(25年かけて段階的に縮小)
(注2)既に受給権を有する方、60歳以降の高齢の方、20代から50代の18歳未満の子のある方には現行制度の給付内容を維持
→ 遺族基礎年金
・子に対する遺族基礎年金が、子ども自らの選択によらない事情により、支給停止されないようにする

●厚生年金保険等の標準報酬月額の上限の段階的引上げ
→ 65万円から75万円に3年間かけて段階的に引上げ(注2)
(注2)実施時期:68万(2027年9月)、71万(2028年9月)、75万(2029年9月)

●iDeCoの加入可能年齢の引上げ
→ 60歳以上70歳未満のiDeCoを活用した老後の資産形成を継続しようとする者であって、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していない者にiDeCoの加入・継続拠出を認める(公布から3年以内施行)

●企業年金の運用の見える化(情報開示)
→ 企業年金実施事業主等が提出する報告書の記載事項のうち一定の事項を企業年金の運用の見える化(情報開示)として公開(公布から5年以内施行)

●子に係る加算等の見直し
→ 現在受給している者も含めて子に係る加算額を引き上げ(子に係る加算のない年金については、子に係る加算を創設)、一律281,700円に(2028年4月施行)
→ 年下の配偶者を扶養する場合にのみ支給される配偶者に係る加算額を見直し(既に受給している者の加算額は維持)、367,200円(2024年度価格の年額)に(2028年4月施行)

●脱退一時金制度の見直し
→ 再入国許可付き出国をした場合でも脱退一時金の受給が可能で、滞在途中の一時的な帰国の際に脱退一時金を受給するとそれまでの年金加入期間がなくなってしまう仕組みを改正し、再入国許可付きで出国した者には当該許可の有効期間内は脱退一時金は支給しないこととする(公布から4年以内施行)
→ 支給上限を現行の5年から8年に引上げ(政令で措置予定)

●障害年金等の直近1年要件の延長
→ 2036年4月1日前に初診日等がある場合についても引き続き適用できるよう、時限措置を10年延長(公布日施行)

●国民年金の納付猶予制度の延長
→ 2035年6月までの間についても利用できるよう、時限措置を5年延長(公布日施行)

●国民年金の高齢任意加入の対象を追加
→ 昭和50年4月1日までの間に生まれた、老齢基礎年金の受給権を有しない者も利用できるよ(一息入れる(措置

●マクロ経済スライドによる給付調整
→ 報酬比例部分の
マクロ経済スライドによる給付調整を、配慮措置を講じた上で次期財政検証の翌年度(令和12年度を予定)まで継続

●離婚時分割の請求期限の伸長
→ 請求期限を2年から5年に伸長(公布から1年内施行)

●遺族厚生年金受給権者の老齢年金の繰下げの許容
→ 繰下げ申出を認める(老齢厚生年金の繰下げについては、遺族厚生年金を請求していない場合に限る)(2028年4月施行)

●簡易型DC制度の見直し
→ 通常の企業型DCを中小事業主を含めた事業主全体が取り組みやすい設計に改善し、簡易型DC制度については通常の企業型DCに統合する(2026年4月施行)

●石炭鉱業年金基金制度の見直し
→ 石炭基金をDB制度に移行して、年金給付等の権利義務を承継することとし、これをもって石炭基金法を廃止(2025年10月1日、2026年4月1日、公布から5年以内施行)

詳細は、下記リンク先にてご確認ください。
年金制度改正法案を国会に提出しました|厚生労働省
年金制度改正法案を国会に提出しました(厚労省)

TOP